私たちが歩いた“1997年の物語”

クッキーシューの原型は、フランス菓子

「シュー・オ・クラッカン(Craquelin)」

薄くのせたクッキー生地が、焼き上がりとともに

あの “カリッ” とした表情と、ほろっと香ばしい余韻を生む——

そんな小さな工夫から生まれたお菓子です。

フランスでクラッカンが登場したのは、

まだインターネットも今ほど普及していなかった

1990年代末〜2000年代初頭。

日本に広まるのは、そこからさらに数年あと。

2000年代に入り、ようやく “クッキーシュー” という言葉が

街のパティスリーで見かけられるようになりました。

でも――

私たちは、実は1997年から焼いていました。

当時、日本のシュークリームといえば、

ふわっと軽く、やわらかい皮が当たり前。

だから、私たちが焼いた

“クッキー生地をのせて、しっかり焼き込んだシュー”を見て、

お客様はみんな口をそろえて言いました。

パンみたいにしっかりしてるね!

驚かれながらも、もう一度買いに来てくださる方が増えていく。

焼き上がりの香りが、なんだか誇らしく感じられたことを

今でもよく覚えています。

いまでは当たり前になったクッキーシューですが、

その裏側には、

“まだ名前すらなかった味” に挑んだ私たちの時間が流れています。

時代より少しだけ早く踏み出した一歩。

その小さな冒険が、いまの私たちをつくっています。